学校のミュージカル

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ミュージカルの本場はアメリカのブロードウェイとイギリスのロンドンと言われています。

そのロンドンの教育現場、演劇への力の入れ方が凄いということを今年知りました。まず演劇の授業(Drama)が日常的にあり、試験もあるし多くの大学で演劇関係の学部もある。

娘の学校も息子の学校もそれぞれ一年に一度行われるミュージカルにはオーディションで選ばれたキャストたちが演じるミュージカルが開催されます。

私が中高生の頃の日本の学校は、全員が参加する合唱コンクール吹奏楽部だけのコンサート、演劇部だけの文化祭のステージはありましたが、このような大規模なミュージカルは身近にありませんでした。でもイギリスの学校は周りの学校もみんな当たり前のようにミュージカルの舞台を学校行事として開催していて、音楽系の推薦入試で一定数楽器の得意な子達がいるような学校は演奏の部分も生徒がオーケストラとなって、舞台に上がる演劇キャスト、そして舞台の裏方で活躍するスタッフ、ダンスのみを担当するダンサーなど本物のミュージカルさながらに構成されるそうです。そうやって公立校でも10代の頃から鍛えられていて、もちろん本格的な演劇学校に通う子も、演劇の事務所に所属して子役として活躍する子もチラホラ。裾野が広いんだなと実感しました。

娘の学校ではオーケストラが構成されていないので、曲はプロの録音のものを流すようになっていますが、歌はもちろん生徒たちがマイクなしで歌います。今年の演目はライオンキングで、娘がそのオーディションに自ら応募して合格し、練習が始まったのはまだ11月頃でした。

まずは中高生用(ジュニア用)の台本が渡され、娘は脇役のLionessとGrassという歌とダンスをする予定でした。ジュニア用の台本の内容は本物のライオンキングとほぼ同じですが、少しセリフが変えられていたり時間が短縮されていたりします。週一回だった練習が週二回になり週三回になり、本番が近づくにつれてどんどん練習やリハーサルにかける時間が長くなりました。途中で練習に真面目に参加しない子が出てきてキャストから脱退させられると、その穴を真面目な子が埋めることになります。娘はがんばりを認めてもらえてハイエナのShenziというセリフが結構多い役を途中から担当させてもらえて、Lioness, Grass, Shenziの一人三役になりました。忙しいけどやり甲斐があるようで、練習がある日の顔はお仕事モード。明るくキリッと引き締まったような表情になっていて、家でもこっそり練習しているようでした。

本番ギリギリになると授業も定期試験も受けずにキャストの子たちだけ集められて過ごすことが多くなりました。放課後17時半を過ぎることもあるので、そんな時は無料で食事の提供(例:ソーセージマッシュ)があったり先生からお菓子をもらったりしていました。

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リハーサルの二日間は朝から晩までずっとリハーサルだし、本番の二日間も午前中にお客さん(地域の小学生や地域の高齢者)の前で一回、夕方に一般公開で一回など、やはり朝から晩までずっとミュージカルのために過ごします。

キャストになったおかげで本物のライオンキングのミュージカルを遠足のようなかたちで観に行かせてもらえたり、Allegiancesというミュージカルを、やはり遠足として観に行かせてもらったり(どちらもキャスト以外の子たちは授業中)。さらに本番の待ち時間は学校で映画を何本も観せてもらったこともありました。何だか優遇のされ方がすごいですけど!受けそびれた定期試験は後で別の時間に受けさせてもらっていました。

そして迎えた本番。実はオーディションの時から絶対に会場に観に来ないでと言われていました。こっそり変装して行ってしまおうかとか、他の友達に行ってもらおうかとか色々考えましたが、身内が来ると緊張してパフォーマンスに影響が出るから本当にお願いと言われていて、泣く泣く観に行かずに学校の外から応援しました。

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満月の夜。娘のことを想いながら寒空の下で待つ親の気持ち。これは経験してみないとわからないもの。娘がもし大人になって、親になって、同じ経験をしたらきっと今日の私の気持ちが分かるんだろうな。でも、わからなくてもいい。こういう気持ちを味わえたこともまた幸せだと思おう。舞台を観ることができたママ友達に後で様子を聞いたところ、娘は重要な場面でしっかり活躍していたそうです。後で学校からの写真でも様子を伺い知ることができました。

活発だった日本での娘が急にイギリスへ連れて来られて友達ゼロの状態でこの学校に編入し、毎朝学校へ行きたくない、お腹がいたいと言って、これまで転校を考えたこともありました。そんな娘が一年たってキリッとした表情で大きな舞台に立ち、大きな声で、流暢な英語と上手な歌で活躍したんだと思うと、それだけで本当に感動です。

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力を出し切った後は、ぽっかりと心に穴が空いたようで、喪失感で、しばらく立ち直るのに時間がかかっていました。風邪もひいたし勉強も取り戻すのが大変だったみたい。でも、同じキャストの重要な役をやっていた子たちがそのままコーラス部に入ったようなので、娘もその流れでコーラス部に入りました。また来年もミュージカルのオーディションに応募できたら挑戦してほしいです。