ホームレス・シェルター

ここ最近、子供たちに早くボランティア活動をさせようと躍起になっていました。特に大学受験を控えている息子に関しては、社会貢献の活動をしていたかどうかが大学入試の書類にも重要になってきます。日本の一般的な、いわゆる試験一発勝負の大学受験と違って、イギリスの大学か日本の帰国受験を考えている場合は、どちらにしても日頃の成績や最後の試験結果、面接や大学独自の入試テストだけでなく、ボランティア活動や職業体験の内容など、あれこれ自分のPRできる活動を記入して個性を発揮し、やる気もアピールしなければいけないそうで。のんびりしていられません。でも、

今日ほんの少しのボランティアをしてみて、子どもにプッシュしていた自分を反省しました。

 

近くに住む友達が冬の期間、週一回教会でボランティア活動していて、この日はデザートを提供する人が足りないとの事だったので、2種類のケーキを焼いて教会に持っていきました。少しでも何か社会の役に立ちたいと思っていたところだし、子どもに言う前に自分がやってないじゃん!って思っていたところだったので、きっかけを作ってくれた友達に感謝。さて何を作ろう?全くわからないので、スタッフの人達が配りやすいカップケーキと、予め小さくカットしたチーズケーキを持って行きました。

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あたたかい教会の中にはまだボランティアのスタッフが7〜8人しかいなくて、食事のセッティングや聖歌隊コーラスの練習中でした。夜7時頃ホームレスの人たちが来ることになっていて、ここで食事や寝床の提供をします。泊まり込みのスタッフもいて翌朝も朝食を提供して解散になります。私はデザートを持って行っただけで特に仕事はなく、提供しやすいようにトレイやお皿に盛り付けただけですが、色々と説明が聞けて理解が深まりました。

ロンドンは今、ホームレス人口が増えています。カウンシル・ハウスといった、国が建設して運営している住居も足りず、入居申請する人たちの長い待機リストが存在するそうです。そういったハウスに入居できるまでの間、やむを得ず一定期間ホームレスになる人たち。冬場は氷点下になるロンドンで野外で寝ることは命の危険につながります。だから11月から2月までの寒い時期に地域の人たちが少しずつ力を合わせて助け合うのだそうです。ホームレスと言っても、つい先日まで家があって何らかの事情で急に住居を失った人達も多いので、基本的には仕事があって毎日朝から夕方まで働いています。仕事はあるけど家がない。“夜7時頃になったら来る”、というのはそのためです。

自分の勝手なイメージでは路上に座り込んで、あるいは地下鉄の中で物乞いをしているホームレスのイメージが強かったので、働いているのに家がない人たちという存在を想像できていませんでした。

もう一つ驚いたことは、この教会(キリスト教)が他の宗教団体とも連携して持ち回りでホームレス・シェルターになっていること!大昔ですが宗教戦争時代は殺し合いをするほどの敵対同士だったような異教徒同士の人々が手を取り合って、水曜日はここの教会、木曜日はユダヤ教シナゴーグ、金曜日はイスラム教のモスクなど、同じ地域に存在する幾つかの宗教団体が助け合っているそうです。確かに毎日だと時間的にも金銭的にも負担がかかりますよね。週一回ずつの持ち回りだったら何とかなる。頑張れる。そういう考え方なんですね。

「自分もいつ助けてもらう立場になるか分からないから。」

というボランティアの方の声が、心に残っています。皆さんお仕事していて家事もあって忙しいのに、ここへ何の迷いもなく来ていらっしゃいました。自分の身体が健康で、家族もいて、特に困っていない時には忘れてしまいがちですが、人間って一人では生きていけない弱い生き物なので、助け合って生きる。当たり前のことを当たり前だよって笑顔いっぱいで実際に行動している人たちを目の前にして、心が震えました。